突如、彼の長い腕が頭上を掠めドアの淵をガシッと掴み、冷視線を侑弥さんに固定したまま、足先をドアの隙間へと捻じ込んで来た。
当然、私との距離も急激に縮まり、私の身体は彼に抱え込まれるような状況になっていた。
そして、
「寿々、ここで待っててやるから荷物を取って来い」
「へ?」
突然、俺様口調の彼氏的発言が降って来た。
これは一体、どういう流れ?
唖然とする私の頭に空いている方の手を乗せ、
「早くしろ。……ここ、凄ぇ空気悪ぃ」
「……………うん」
『本間一颯』という人物からは想像も出来ない口調だけど、目の前にいる侑弥さんに対して牽制しているのだと安易に理解出来る。
だからこそ、彼の態度に素直に従う事にした。
だって、彼はこの状況下で私を救ってくれているのだから。
私は侑弥さんの横を通り、玄関内へ入ろうとした、その瞬間!!
「ッ?!!」
一瞬にして身体が凍りつく。
ヒールを脱ぎ掛けていた足が思わぬ行動に制止させられた。



