「はい、終わったよ」
「ありがとうございます」
「じゃあまた午後に来るからね」


そう言うと看護師は去っていった


これがわたしの朝のはじまり
日常の一部分

白い壁に質素なデザイン
過ごしやすさはあまり重視されてない
窓から見えるのは小さな中庭
春の暖かい日差しが部屋に差し込む

ここ、わたしがいるのは病院の病室


物心ついたときから
わたしはすでに病室にいた

病名はよくわからない
とにかく難しい名前だったのは覚えている
あとは、現在の医学では治せないこと


それだけで十分な情報量だ
治せないのに知りたいとは思わない
これって現実逃避なのかな?


両親は共働きで
普段あまり病室に来ないけど
なるべく時間を作ってくれてるのはわかる
何より愛されていることも

だからあらゆる治療法で
少しでも可能性のありそうなものは
どんなものでも試してみてくれた

今まで成果は芳しくなかったけれど
わたしには気持ちだけで十分だ

気持ちだけ、というのは言い過ぎかな?


わたしだって諦めてない
どんなに小さな希望だとしても
あるのなら試してみようとも思う
でも、少し・・・ううん
本音は諦めだってある
たくさん苦しんできたけれど
どれもあまり効かなかった
効果が出ないことを頑張るのは
正直に言うと、かなり辛い

『諦めるなければ治るよ!』

そんな慰めの言葉も
本音を言ってしまえば苦しい

わたしのために言ってくれてる両親には
絶対に言えないことだけれど・・・