「……っ」
ブレーキの甲高い音を響かせながら突っ込んでくる大きなトラック。
私よりもずっと前を歩く智。
ドンッと聞いたこともないような鈍い音。
彼を染める、残酷すぎるほどに濃い赤。
手を伸ばした。
だけど、届かなかった。
届くわけがなかった。
ーーああ、覚えてる。
嫌でも、覚えているよ。
忘れたくて忘れたくて仕方ないけど、あんなの忘れられるわけがないでしょう。
だってきっと、あれはもう。
「……痛い」
怪我をしてるのに走ったからかな。
はは、誰にも怒られなかったもんね。
怒るような人がほとんど誰も廊下にいなかっただけだけど。
だけどね、痛いのは頭じゃないんだ。
心臓が、心臓が痛いよ。
「とも、智……っ」
痛いよ、智。
痛くてたまらない。
だけど、きっとあなたはもっと。



