「……そう、それならいいの。気にしないで。 とりあえず、ナースコールね」
「ナースコール……?」
ということは、ここは病院?
どうして、私が……?
「千沙、頭の他にどこか痛いところはない?」
「ない、よ」
「そう。よかった」
「……ねえ、お母さん」
小さく呼びかけると、お母さんは「なに?」とぎこちなく微笑んだ。
私は布団の裾をぎゅっと握りしめて、ぽつりと呟く。
「中学生の頃の夢を、見たの」
智と出会って、キラキラと輝きはじめた中学校生活。
だけど、それはある日を境にその輝きを少しずつ失っていく。
そして最後には、
輝きなんて、どこにもなかった。
「すごくすごく長い夢でね?
何よりも、現実と錯覚するくらいリアルだったの」
まるで、あの頃に遡ったみたいだった。
嬉しいのも、苦しいのも、悲しいのも。
あの頃のすべてが、体に流れ込んでくるようで。
どうして、急にあんな夢なんて見たんだろう……?