◇◇



「……ん」



重たい瞼を持ち上げると、目の前に広がるのは見慣れない真っ白な空間。

独特のにおいが鼻をツンと刺す。


私の部屋じゃない。

……ここ、どこだろう?



「……千沙!」



呼ばれて顔を向けると、そこには心配そうな顔をしたお母さんがいて。


……わからない。 どういう状況?



「……いっ」



起き上がろうとすると、頭にズキリと小さな痛みが走った。



「あっ、無理しちゃだめよ! あんた、頭を打ってるんだから!」


「え……?」



頭を打っている……?
私が? どうして?


なにひとつ、この状況を理解していない私。

その様子を見て、お母さんは「覚えてないの……?」と小さな声でゆっくりと、私に問いかけた。



「……なにを?」



私の言葉に。表情に。

お母さんは大きく目を見開いて、それからハッとしたようにして、私から視線を逸らした。