階段を駆け下り、急いで昇降口へと向かう。


もう終礼をしてから結構な時間がたっているせいで、校内にはほとんど人が見当たらない。



もしかしたら、もう……彼も帰ってしまっているかもしれない。


廊下には、パタパタという私の足音が静かに響く。



……あ。


ピタリと足を止める。



待っててくれてる……。


遠くに見えるのは、少し俯きながら靴箱にもたれている彼の姿。


その両耳には、イヤホンがつけられている。



なに、聴いてるんだろ……。


そんなことを思いながらも、息を整えてゆっくりと彼に近づく。


だんだんとハッキリ見えてくる彼の横顔。



鼻筋が通っていて、少し垂れ目がちな目に、長いまつげ。

左目尻にある泣きぼくろは色気をひきたたせる。


そして、程よく白くキメ細かな肌は、女子なら誰もが羨むはす。



ああもう……ズルいなあ。

男の子なのに、どうしてそんなに綺麗な顔立ちをしているんだろう。



横まで来ると、彼は瞼を閉じていて。

私はツンと、人差し指で彼の肩を軽く叩いた。