“我慢しなくてもいいんだよ”
“大丈夫だよ”
その温もりが、そう言ってくれているみたいで。
……だから。
「……ううっ、く、」
私はその時、やっと、安心して涙をこぼすことができた。
「恥ずかし、かった……っ」
「うん」
「……っ、くや、しかった」
「うん」
「ーーでも、助けてくれて、うれしかった……ありが、とうっ……」
そんなんじゃないよ、って佐伯くんが困ったように小さく笑った。
だから私は、そんなつもりじゃなくても私は助けられたんだよ、ってまた泣いた。
ありがとう。 佐伯くん。
今だけじゃないよ。
飛んできたバスケットボールから助けてくれたのも。
体調の悪い私を、家まで送ってくれたのも。
泣いている私を見つけてくれたのも。
会ったら絶対に声をかけて、優しい笑顔を見せてくれるのも。
いつも、ありがとう。
何度も、ありがとう。
「全部、全部、ありがとう……っ」



