「今も黙ってるけど、それで同情でも……」
……泣くな。 堪えろ、私。
こんなやつなんかの前で、泣くな……っ。
下唇を強く強く、噛み締めたときだった。
「ねえ、なにしてるの」
教室に、刺さるような冷たい声が響いた。
「……な、なんだよ。 おまえ!」
「なにって、別に? 3組の前通ったらなんだか異様な雰囲気だったから、なにがあったのかなって。
ーーねえ、なにしてたの?」
……なん、で?
どうして、いつも私のことを助けてくれるの?
私が助けを求めているときに、駆けつけてくれるの?
……ねえ。
「佐伯く、ん……」
それが、ただの偶然でも。
私はきみに、何度も救われている。
関わりを持つようになってまだほんの少ししか経っていないのに、こんなのっておかしいかな?
でもね、本当にそうなんだよ。
ーーああ。
せっかく堪えていた涙が、一気にあふれてしまいそうだ。



