「千沙、ほんとになにが……」
集まってくるクラスメイトたちを見て、友梨が口を開いたときだった。
「おい、藤江」
ずいぶんと偉そうに登場した、ことの発端(ほったん)の男……。
「なに、山田くん」
貼り付けた笑顔が、自分でもわかるくらいに引きつる。
山田 “くん” だって。
ああ、自分で言っておいてなんだけどすっごい気持ち悪い。
用事があるなら早く終わらして、さっさとどっか行ってよ。
「昨日のことなんだけどさあ」
……でしょうね。
内心悪態をつきながらも、口では「うん、なに?」とできる限り穏やかにこたえる。
まさか謝りにきたわけじゃないでしょ?
その何様だよってくらいえらそうな態度からして。
「おまえさ、なんか勘違いしてね?」
「……は?」
勘違いって、なにを。
間抜けな声を出したわたしを、山田がふんっと鼻で笑う。
「俺がおまえなんかに、付き合ってって本気で言うわけないじゃん。
なにまじでキレてんの?」



