「千沙ちゃん、昨日は大丈夫だった? 山田のやつってば最低だよねえ」
私を取り囲んで、同情したように言う女子たち。
あんたたちだって最初は一緒になって楽しんでたくせに。
……だなんて、言わない。
「おー、藤江! その、昨日はごめんなー?」
わたしの顔色を伺うようにして、謝る男子たち。
私が机蹴っ飛ばしてなかったら謝りになんて来なかったくせに。
こぼれそうになったそれを、ぐっと押し込める。
本音の代わりに貼り付けたのは、つくりものの笑顔。
「大丈夫だよ、私こそごめんね」
ほら、ちゃんと笑える。
昨日のことなんて、まったく気にしていないみたいに。
だからみんなほっとして、「そっか」と安心したように私から離れて行く。
ほら、これで正解なんだよ。
これから1年一緒に過ごすクラスメイトたちなんだから、ちゃんと仲良くしておかなきゃ。
私が大人にならなきゃ。



