「ううん。今日は、ミーティングだけだったみたいだから」



練習はなくても、部活自体はあったんだ……。


……休ませてしまった。

申し訳ない気持ちで、胸がいっぱいになる。


チラリと佐伯くんを見ると、彼は “気にしないで” とでも言うような優しい瞳で微笑んだ。



「じゃ、帰ろっか」


「あ、うん……」



どんな距離をとればいいのか分からなくて、少し離れて佐伯くんの左隣を歩く。


近い、かな……?

いや、逆に遠すぎて変に思われてたら、どうしよう。


……うーん。
わからないなぁ、この距離……。



ゆっくりと足を進めながらも、視線をチラリと右に移す。

夕陽のオレンジに染まった彼の横顔が、私の瞳に映った。



……綺麗。

思わず魅入ってしまうほどに。



どくん、どくん


そっと手を当てれば、制服の上から伝わる心臓の音。



胸がこんなにも暴れているのは……きっと、男の子とこんな風に二人きりになるのは初めてのことだからだ。


制服の上から胸をギュッと抑え、そう自分に言い聞かせた。