明日、あなたが目覚めたら




「長年の付き合いだからか、お互い全然異性としてなんて意識してなかったの。

本当に仲のいい、ただの “友達” だったよ」



……はは。
なに言ってんの、私。

よくそんなさらりと嘘をつけるよ。


『千沙はわかりやすいよね』なんて、智に笑われたあの頃の私は……いったい、どこへ消えてしまったんだろう。


ほら、『わかりやすい』と言っていたはずの彼だって今はもう私の嘘を信じきっている。



「そっか、うわ……なんかごめん?」



次こそ本当に顔を赤くした智が、顔を手で覆うようにして言う。

腕もケガをしているから、なかなか上手く曲げられないみたいだけど。



「いいよ、覚えてないんだから仕方ないじゃん」


「やーでも恥ずかしい」


「はは、私と佐伯くんが付き合うなんて……天と地がひっくり返ってもありえない」


「まじか……」


「まじまじ」



ははは、とうなだれる智を笑いながらも、内心は全然笑えてなんかなかった。

笑えるはずがなかった。