「そんなに長い間、異性と仲良くしてるってなかなかないでしょ?」
それは、 “恋愛関係にならなかったのか” ということだよね……?
確かに年頃の男女が、あまりに仲がいいのは不自然だ。
「……っ」
智のそばにいた日々が、脳内でものすごい勢いで再生されていく。
せっかく誤魔化そうとしていたものが、ぜんぶ剥がれ落ちていきそうだ。
「それに、俺が目を覚ましてすぐに『だれ?』って言っちゃったときの藤江さん……」
ああ、智。
その続きは……。
「ーーちがうよ」
言っちゃだめだよ。
それを言われてしまったら、私はもう誤魔化せる気がしないから。
「……え」
そんなにも私の声が冷たかったのか、智は驚いたように大きく目を見開いていて。
あ、と思った。
慌ててへらりと笑顔をつくる。
「私たちの間にそんな感情なんて一切なかったよ、残念ながらね」
ふざけたように。
だけど確かに、念を押して。



