◇◇



『先輩、もし私の選んだ道が間違っていたらどうしよう』


『大丈夫だよ、きっと間違いなんてないから』


『また、てきとうな……』


『あはは。でも、もし苦しくてもう立ち上がれなくなってしまうような道だったらいつでも振り向いていいよ』




ーーそのときはきっと、

俺がそばにいてあげるから。





真波先輩とそんな会話をしたのは、つい3日前のこと。


そして私は、今……



「そっか……。
ありがとう、千沙ちゃん」



智の入院する病院に来ていた。


智のお母さんと……そして、智と、話をするためだった。



目の前に座る智のお母さんが、少し赤くなった目を細めて笑う。

……いろんな感情が混ざった、複雑そうな笑顔だと思った。


そうだよね。

悩んで苦しんで泣いていたのは、私だけじゃない。


智のお母さんだって、すごくすごく悩んで。

きっと本当は私にあんなこと言いたくなかったんだろうなって、そう思うんだ。