「ちぃちゃん……?」



突然、頭上からふってきたその声。


人が入ってきたことになんて、全然気づかなかった。


そんなばかみたいな呼び方をするのは、たったひとりしかいなくて。

なんでいるんだ、なんて思いながらも私は小さくその声にこたえた。



「なんでずか、真波せんぱ、い」


「うわ、ぶさいく」


「…………」



泣いてる後輩にそれはないだろう。


だけど、率直すぎるその真波先輩らしい一言に、ふっと肩の力が少しだけ抜けた。


すとん、ととなりに真波先輩が座る気配がする。



「なん、で、ここ……」


「休憩スペースに入ろうとした人たちが一瞬で踵を返すから、いったいどんな厳つい人がいるのかと思って」


「……まじでずか」



私、めっちゃ迷惑なやつじゃないですか。

うつむいて顔を覆ったままそう言うと、「あはは、本当にね」と真波先輩はケラケラ笑って言う。


……この先輩、ほんとうに遠慮の “え” の字もないな。