「…………」
智のお母さんの切なそうな顔が浮かぶ。
“今はまだ目を覚まさないほうがこの子にとって幸せかもしれない”
……確かにそれは否定しきれない。
だって智にとって、バスケは本当に大切なものだったから。
どうして断ったのかは知らないけれど、高校だってバスケで推薦がきてたらしいし。
それくらい、上手だった。
真剣だった。
だからこそ、って意見もわからなくもない。
……だけど、私はやっぱり智に目を覚ましてほしいって思うよ。
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コンコン
昨日来たばかりの病室の扉を、小さくノックする。
すると、中から「どうぞー」というゆったりとした智のお母さんの声。
「こんにちはー、おじゃまします」
「あら、千沙ちゃん! 今日も来てくれたのね!」
「当たり前ですよ〜!」
「暑いの苦手なのにありがとうねえ〜」
「いえそんな……」と、そこまで言って気がつく。
あれ。 智のお母さん、そんなことまで知ってたっけ……?



