冗談だよ、冗談。
真波先輩はそう言って笑ったけど、そんなの当たり前だ。
本気だったらたまったもんじゃない。
「俺はちょっと風邪ひいてね」
「風邪でこんなでっかい病院までわざわざ来たんですか」
「いやだって家が近いんだもん」
「……はあっ⁉ 家が近いんだもんって、この辺高級住宅街じゃないですか!」
「え、そう?」
きょとんとしてこたえる真波先輩に私は頭を抱える。
……もうやだ、なんなのこの人。
なんでこんなにいろんなものに恵まれているのに、こんな残念なことになっちゃったの……。
「まあまあ、そう落ち込むなって」
「落ち込んでません!」
ぽんぽんと頭の上に手を置かれて、キィッと真波先輩を睨む。
「触らないでください!」と手を払いのけようとしたんだけど……あれ?
ぐぬぬ……‼
……あ、頭から手が離れない!
どんな力で抑えつけてんのこの人‼
痛い! 痛いから‼
「ちょっと、真波せんぱ……」
「……ちぃちゃん、このたんこぶどうしたの? ちっこいの」



