「響子ちゃんを連れ去りに来たんだ」





信号が青にかわった。
車は再び発進する。





「…え?」


一瞬、その言葉の意味が理解できなくて頭が働かなかったけど、すぐに笑いが吹き出した。


「そういう切り返しで来るなんて思わなかった」

「何で笑うの?」

そう言った礼くんも笑ってる。


「何年も会ってなかったのに、いきなり現れて連れ去るなんて…なんか白馬の王子様みたい」

「馬じゃなくて車でごめんね」

申し訳なさそうに言う礼くんを見て、また笑ってしまった。