K・K・K

気の赴くまま、香は来た電車に乗り込んだ。

気がつくと、みなとみらいの駅まできていた。
香はそこで下り、長いエスカレーターで地上へと向かった。

駅を出ると、大きな観覧車が目に飛び込んできた。
香はその観覧車へ向かい、
道路を横断して園内に入り、券を買った。

入場スタッフは感じのいい笑顔で香を迎えてくれた。
香はほほを少し上げてそれに応え、
観覧車に独りで乗り込んだ。

観覧車はとてもゆっくりと、香を最高部へ運んだ。


太陽と海がまばゆい光を放っていた。
香は、3年前を思い出した。

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「かず、見て!!水平線が見えるよ!」
「香はほんとに海が好きだなぁ。(笑)」
香の隣に座っているのは、香の1才年上のお兄ちゃん(かず)だ。

「何よ、かずだって、こっそり彼女連れてきてるじゃない。私知ってるんだからっ。」
香は横目でかずをみた。

かずは照れながら、目を細めて水平線をみていた。
「香もいつか彼氏と来るだろ?」

「・・・・・。」

「オレはいいよ。香に好きな人ができて、幸せだったら、応援する。」
かずは寂しそうに言った。


香とかずは、血の繋がりがない兄妹だった。

かずの父と、香の母は、まだかずと香が幼少の時に再婚した。

二人とも子連れだったので、二人の子供が、
本当の兄妹みたいになったことを、とても喜んでいた。


だから香は、かずの事が好きなことをずっと隠してきた。

かずもまた、二人の間に恋愛感情を持たないようにしてきた。
父と母を泣かせたくない。
香といるのは妹だからで、好きなんかじゃない。
そう思うため、わざと気の合う女子と付き合ったりなんかしていた。


それでも。
お互いの気持ちがわかってしまうのも兄妹。


二人はいつもその境を行ったり来たりしていた。


「・・・・。かず・・・・・・・。私ね!かず・・・・。」
香はかずを見上げた、
遠くの海から出発の合図が聞こえた。『ブブ~』


その瞬間、かずの顔は香の視界から消えて、
かずの形のいい耳が、香の目の前で、
太陽の光をあびて、うすピンク色に透けて見えた。

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