吹奏楽部の恋愛事情



俺はダッシュで走り、


多分愛羅がいるであろう美術室に全速力で向かっていた。


ガラッ____________________!!


「愛羅!!」


美術室の扉を勢いよく開け、


大声で愛羅の名前を叫んだ。


「えっ、ちょ、悠人?」


いきなりの事に、


桃華やその場にいたメンバー全員が驚いていた・・・


俺は息を整えながら、


美術室のすみずみまで愛羅を探したのだが、


どこにも愛羅の姿は見えなかった。


「なぁ、愛羅は?


ここにこなかったか?」


「いや、きたけど、


春貴とどっかに行っちゃったんだよね。」


「どっかってどこ?」


桃華「それが、


いつもの場所に行くかって言ってなかったから・・・」


いつもの場所・・・


もしかして、あそこか?


ある場所が脳裏に浮かび、


すぐその場所に行こうと思ったのだが、


「ちょっと悠人!


何があったか説明してよ!!


それにまた愛泣いてたじゃん!」


桃華にガッシリと腕をつかまれ、


身動きがとれなくなってしまった・・・


適当に誤魔化そうかと思ったが、


桃華の必死な目と、


メンバーからの無言の圧力がかかり、


仕方なくさっきあった事をこと細かく説明したのだが、


みんなの目がだんだん冷たくなり、


しまいには腐ったものでも見るような目を俺に向けていた・・・


「悠人、サイテー」


「ほんと、心から、反省しています。」


桃華に怯えながら、


深々と頭を下げて謝った・・・


すると、


桃華と同じトロンボーン担当の二年生、


寺田優樹(てらだゆうき)が、


衝撃的な事を口にした。


「だから、愛羅先輩、


春貴先輩に抱きついたんですね・・・」


はっ?


愛羅が、春貴に、抱きついた?


俺はまさかと思い、


「なに、言ってんの?


愛羅がそんな・・・するはず、ないじゃん。」


俺はこんな事実が信じられなくて、


冗談にしか思えなかった・・・


だが、


「残念だけど、ほんとだよ。


愛、ここに来た瞬間、


まっさきに春貴の方向かって抱きついてたんだよ・・・」


真剣な表情の桃華を見て、


俺の顔からは笑顔が消えてしまった_____