吹奏楽部の恋愛事情



音楽準備室の奥の一角。


ここは少し狭い空間で、


人が2人くらい収まる程度しかない・・・


ここで春貴に話を聞いてもらっていた。


「どう?う落ち着いたか?


ほらこっち向けよ、


涙ふいてやるから・・・」


春貴の胸から顔を上げると、


ティッシュで私の顔を綺麗にふいてくれた。


「んっ、ありがと・・・」


小さい声でお礼を言うと、


いつもの笑顔で笑ってくれた。


その笑顔を見たら、


心が大分落ち着いてきた・・・


「んで、何があったんだ?


まぁ、十中八九悠人の事だろうけど・・・」


「うん、そう・・・だよ。」


少し目線を下げ、


力なくそう答えた・・・


「やっぱりか。


悠人と何があったんだ?」


「実はね・・・」


さっきあった事を話したら、


また少し涙が出てきてしまった・・・


「あんなヒドい事言って、


私、悠人に嫌われちゃったよね・・・」


今までの話しを聞いていた春貴は、


少し顔をしかめながら、


「そっか・・・


確かにそれは傷つくよな。」


そう言ってまた優しく背中を撫でてくれた。


春貴の手はすごく暖かくて、


今まで固まっていた心が、


ゆっくりと溶けていくようだった・・・


「でもな、愛羅。


悠人が愛羅を嫌いになるなんて事は、


絶対にない。


それだけは言いきれる。」


そうキッパリと春貴はいいきった・・・


「なんで?


なんでそんなのが言いきれるわけ?」


どうしてそう言いきれるのかが、


私には理解できなかった。


彼女の私より、


友達の舞奈や魅瑚をとったのに・・・


いったい春貴は、


なんの根拠があってそんな事言ってるんだろう?