足音は二人分だった。微妙にずれて「ぱたぱた、ぱたぱた」と聞こえる。
そして――

「ガラッ」

 扉を開けて入ってきたのは、先生だけだった。
廊下に、人の気配はない。
空耳だったのか、と思った。もしくは中耳炎なのかもしれない。いや、廊下で反響したんだろう。
きっと先生怒ってるんだろうな。それでいつもより乱暴に歩いたんだろう。何か有ったのかな。もしかしてぼくがいつの日か登校したときにもう校門が閉まってて裏から侵入したのがばれたとか。

我ながら凄まじい想像力だと思った。否、ただ寝ぼけているだけらしい。
実は昨日、というか今日明け方五時に寝たんだ。

「それでは、と……」

 先生が話を始めたので意識を取り戻せた。危うく寝てしまうところだったのだ。

ぼくの背後には常に睡魔がいるので注意していただきたい。