「俺……おれ…」



「ゆっくりでいいよ」



私がそう言うと、優斗は
うなずいて深呼吸をした。



そしてまた話しだした。



「俺、実は小学校卒業したあと、具合が
悪くなって…。病院に行ったんだ」



「うん…」



「そこで初めて……自分の胃が、
ガンに侵されていることを知った」



え…?


胃ガン?



「で、その病院で治療もできたけど、
俺は断った。…梨衣奈に、俺の…
醜い姿を見せたくなかったから…。


だから俺は、中学入学までに、
治療に専念できる場所に…
梨衣奈には何も言わずに引っ越した。



梨衣奈に言ったら、絶対に反対
されると思ったから…。



でも辛かった…。


梨衣奈に会えないことが、
辛くて辛くてたまらなかった。


俺は胃ガンのせいで何も
食べられなくなり、抗がん剤治療のせいで
髪の毛は全部抜け落ちた。



そのときの俺は、
ずっと…死にたいと思っていた。



でもそんな俺を支えてくれたのは、
9年前にした、梨衣奈との約束だった」