(いつから見てたんだろう…)



美梨は、さっきからずっとそればかりを
考えていた。


遮光カーテンを閉めていたから、昼でも部屋は真っ暗だ。

肌寒いから布団も被っていたし、
裸は見られていない筈だ。




…でも、すごい声出してた…


そう考えた途端、

「やだー!」と叫び、あまりの恥ずかしさに頭から布団を被った。






そのことを思い出すと、今でも美梨は顔から火が出そうになる。

手のひらでヒラヒラと顔を扇ぎながら
言う。



「もう。涼太がちゃんとしないから、
ああいうことになるんだからね。
あんなとこ見られるなんて、
恥ずかしくて死にそう」


「俺だってびっくりしたよ。
あいつと別れたの二ヶ月も前なのに…

で、何が問題?」



美梨は背筋をしゃんと伸ばした。

「帰ってくるの。旦那」

「…」


涼太の動きが再び止まった。

俯き、右手で額の辺りをしきりに
こする。


「ごめんね。涼太」


涼太は何も答えない。

美梨は優しい声で言った。


「石垣島楽しかったよ。ありがとう」


「…嫌だよ」


涼太は顔を上げ、美梨を潤んだ瞳で
見つめる。



「嫌だよ。捨てないでよ。
別れたくない」