猫を撫でる。



五十分コースを終え、起き上がった美梨がエステティシャンに
「あなた、すごいテクニックね」

というと彼女は、

「ありがとうございます」

と、頬を赤らめて
恥ずかしそうに答えた。






「ちょっと!」


エステサロンを出て、廊下を歩いていた美梨の背後から声がした。


「…?」

振り向くと、白いチュニックを着た若い女が立っていた。


「吉川美梨、だよね?」


なぜ呼び捨てにされるのかわからない
美梨は女を訝った。

更に女は聞いてきた。


「結婚してるよね?」


なぜ、そんなことを聞くのだろう…。

不思議に思いながら美梨は答えた。


「してるけど、何?」


女は美梨をキッと睨んだ。


「私、涼太の元カノよ。忘れた?
会ったことあるじゃない。
鍵返しに行った時」


あっ……あの時の足の。


美梨がそう思った瞬間、女の手のひらが美梨の頬に飛んできた。



「痛い!」

思い切り平手打ちされた。


美梨がはずみでよろけると、今度は美梨の長い髪を、思い切り引っ張った。

美梨はキャッと悲鳴をあげた。