【完】彼を振り向かせる方法








手にしていたはずのメガホンは、なぜか地面に落ちていて、


喜びのあまり力が抜けてしまったんだってこと、今になって気付く。




「翔ー!よくやったなお前、マジで!!」


「やっぱもってるよね~、さっすが翔!」



う、うわ……!?



カケちゃんが汗をぬぐいながら、こちらに向かってくる間、私は黄色の軍団に埋もれてしまいそうになっていた。



嬉しいのは分かるけど……私だってカケちゃんに言いたいことはたくさん……。




「応援サンキューな!」


ドキンッ。


あれ……なんでだろう。

数分前に聞いたはずの声なのに、どうしてか心臓がうるさい。



ドキドキ、ドキドキ。



埋もれたままで、カケちゃんの顔だって見えないままなのに……。



そう思い伏せていた私の手を、誰かがグイッと引き寄せた。