【完】彼を振り向かせる方法







コーナーを曲がったカケちゃんの後ろで、砂埃が舞う。



「翔!!いけー!!」


「かーけーるーー!!」



女子も男子も一丸となって、声が枯れるのを覚悟で彼の名前を叫ぶ。



3位という順位は変わらないまま、カケちゃんは私たちの目の前の、一直線コースを走る。



「カケちゃん……翔ーー!!」



初めて呼んだ、その名前。

そのとき思ったんだ、なんて彼にピッタリな名前なんだろうって。



私が叫んだ直後、カケちゃんと2位を争っていた赤色の走者が、足を踏みちがえて転んでしまった。



「よし、いまだ、全力出し切れ翔ーー!!!」



ラッキーだなんて思うのは今日だけだから許して。

それで……カケちゃん、頑張って……!



今度は1位争い。

いける。絶対に、いける……!