カラン。
小さくだけど、確かに音を立てて、尻無浜くんの手からバトンが地面に落ちてしまった。
すぐに次の走者が拾い上げたけれど、数秒のロスは大きい。
その証拠に、1人の走者に抜かれて4位に降格。
「諦めるなケントー!!いけ!!」
「いけーーー!」
後ろの男子の声に押されて、私も負けじと叫んだ。
お願い……繋いで。
ギュッと思わず手に力を込める。
その願いが通じたのか、残り50メートルの直線で、ケントくんは1人の走者を抜いた。
そして……
「カケちゃん!!いっけぇぇーーー!!!」
ここはもう、メガホンを使うほかなかった。
私は目を瞑るくらいに大きな声を出して、
バトンを右手から左手に持ち替えたカケちゃんにエールを送る。
届いて……。



