右手にペンを持ちながら、おでこに手を当てて考える仕草。
ずっと家にいたからなのか、いつもとは少し違う雰囲気が漂う、無造作な髪の毛。
適度な潤いを保って、小さな声とともに動く……綺麗な唇。
カケちゃんに釘づけの私は、一瞬我を忘れて、彼との距離を少しつめていた。
理性がなくなるって、こういうことか。
うぅ……危うく、このままキスしてしまうかと……。
キス……。
その瞬間、またもや"彼女"の言葉が蘇る。
カケちゃんは、キス"される"のに弱い。あと……耳。
彼の耳に視線を向けたそのとき、
私は自分が獣という生き物に変化(へんげ)したような感覚に陥った。
どうしよう。
このまま、私……いや、ダメでしょ普通。
だってカケちゃん今、勉強してるんだよ?
だけど、でも……我慢できない。
穂乃香ちゃんが知っているのに、私が知らないなんてそんなの、絶対に嫌だ。
頭の中で天使と悪魔が戦う構図を、思わず思い浮かべてしまう。
こういうとき勝つのは、どっちだっけ……?



