【完】彼を振り向かせる方法





フイッと思わず視線を逸らす。


恥ずかしい……。



「雛水先輩の前でも、そういう顔するの?」


ドクンッ。


カケちゃんから先輩の名前を聞いた途端、大きく脈打つ私の心臓。



「それとも、今は俺の前でだけ……とか?」


「えっ……」


図星をつかれて、私は思わずカケちゃんの方へ視線を向ける。

すると、思っていたよりも近距離に彼の顔があって、鼻と鼻が触れ合ってしまった。



心地よいリズムで刻む鼓動が、緊張感を作りだす瞬間。



どうしよう。

離れなくちゃって、頭では思っているはずなのに、身体が言うことを聞かない。



……こういうときは身体の方が、気持ちに正直なんだ。




「なぁ……俺の方が好きなんでしょ?本当は」



しばらく私の反応を見て黙り込んでいたカケちゃんは、不意に指先を私の右頬に当てる。



そしてそのまま、髪の毛をかき分けながら、スーッと頬のラインをなぞった。