「いままで、ごめん。……少しは、楽しかった」



鼻を触りながら、照れ臭そうに言う先輩。


あれ、雛水先輩って、こんなに表情豊かな人だったっけ……?



まぁ……いっか。




「それなら、もういいです。私も前に進みますから」



潔くそう告げると、先輩は小さく頷いた。



「俺も、進むよ」


「……はい」



私は涙を手の甲で拭って、彼に背を向けた。




「さよなら」



そう呟いたのは、この立派な豪邸を出た……後のこと。