こんなの……私が好きになった人じゃない。
あんたなんかに、"初めて"奪われてたまるか……っ。
「分かりました。勝手に、好きなようにしてください」
なにか……ここを抜け出す方法……。
先輩はまだ手を止めたままで、私を上から見下ろす。
……今しかない。
「……だけど先輩って下手そうだな。私、上手な人としかしたことないんで不安です。
……延べ人数とか知りたいですか?」
「……は?」
まだ……まだだ。考えろ私。
「なんですか、その呆(ほう)けた顔。
まさか、いままで本当に気づかなかったんですか?
私ってほんとは……」
その瞬間、話にのめり込んだ先輩の力がスッと抜けた。
……よし。いまだ!
ドカッ…………!
「いっ……!」
私の力を抑えていたものが隙を見せた瞬間、
思い切り足を振り上げて、男の急所にヒットさせた。



