「……抱かれたんだな」
フッと蔑んだように鼻で笑う先輩。
なにも、伝わらない。
いまの先輩に何を言っても、きっとなにも伝わらない。
ううん……いままでだってそうだったんだ。
私の声なんて、改札で流れているアナウンスと同じ。
尖った音が響けば、途端に耳を塞ぐ。
そうやって都合よく、私の話を聞いている。
私が先輩以外の人を好きってことが許せないんだ。
だからこうやって私の気持ちが揺らいだ理由を押し付けて、
身体の関係からの延長だって思い込んでる。
そうすれば、自分に否がないことを確実にできるから。
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