【完】彼を振り向かせる方法





パンッ……!



そんな鋭利な音が響き渡ったのは、私が事を言い終えた直後だった。




「……っ!」



右手首が解放されて、ジンジンと痺れる。

それと同時に、頬に電流が走るような痛みが……。


雷が落ちるような、一瞬の出来事だった。




涙なんて引いてしまった。




私は先輩の平手打ちを、真正面からまともに食らったんだ。




カケちゃん……。


再び涙がこぼれ落ちて、心の中で静かにそう呟いた。



広いソファの上から私の髪がはみ出している。


顔も勢いで横に背けられたまま。



おかげで彼の表情は伺えない。



どっちみちその方がいい。

いまは先輩の顔、見たくなかった。



「……綺麗事ばっか並べんなよ」



涙で頬を濡らす私に彼が放った言葉は、それだった。