「先輩が思っているようなことは……」
「寝たんだろ?」
「へ……?」
聞く耳なんて持つ素振りもなく、嘲笑う先輩。
これは……誰……?
「先輩と付き合ってるのに、そんなことするわけない……!」
視界が歪んでくる。
それでも私は、ここでちゃんと、伝えなくちゃいけないんだ。
「先輩と恋人になれた時は、本当に……幸せだった。
デートもたくさんしたかった。
登校時間だけが、毎日キラキラしてた。
私は先輩のことが……本当に好きだった」
目の前の先輩は無表情のまま。
それでも私は、ところどころで鼻をすすりながら話を続けた。
「でも、ある人の優しさと思いやりに突然気づかされて、
私もよく、わからないんですけど……
先輩への気持ちが薄れていって……。気付いた時には彼のことが、大好きになっていたんです」
両手首を封じられているせいで、涙も拭えない。
だけど私は、先輩の目をしっかりと見つめた。



