「千紘そんなに嫌なら棄権する?その代わり宿舎の中で1人……」


「いやそれは勘弁」



部屋で1人になるくらいなら、こうやってみんなといた方が気が紛れるし……


なによりもあの宿舎までの道のりを1人で歩く方が、本当の肝試しだよ。




「いいよ、無理しないで。本気でダメそうなら俺周りにうまくいっとくし」



そう言ったのは、私のペアとして隣にいるカケちゃんだ。

そ、そうじゃん、こんな近くに本人が……。


てゆーか私服……なんかどこかのメンズモデルみたい。


佇まいも、欠伸を手で抑える仕草も、ポケットに手を入れる動作も……超かっこいいし……。



昨日の今日だっていうのに、そんなことをサラッと言えちゃうとことかもう、紳士すぎる。




「ヒロチー、どうする?」


「え?あ、大丈夫!それに私いなかったらカケちゃん1人になっちゃうでしょ?怖いじゃん」


「俺はヒロチーじゃないから平気だけど?」


「な……っ」




からかわれているのがカケちゃんのクスッと笑う表情からわかって……


それなのになんか、無駄にドキドキする。