「ごめんね、カケちゃん……。いきなり電話掛けたりして…、しかも切っちゃったし」



そういいながら、人気の少ないエスカレーターの下のスペースに身を潜めた。

カケちゃんの声が周りの人の声でかき消されないように。




『俺はいいけど……なんかあったんだろ?』


「いや……ううん、なんもないよ」


『……嘘下手』



なんでかな。


心配掛けたくないって思ってたはずなのに、ウソだって気づかれた瞬間、ちょっと心が軽くなった気がした。


変なの……さっきまでは嘘つく準備してたくせに。




『ヒナギク…じゃねぇや、雛水先輩はどこいったの?』


「なんで……どっか行っちゃったってわかるの?」


『先輩がいんのに、電話なんて掛けないでしょ、普通』


「あ、そっか……」


『俺バカだけど、こーゆーことには鋭いんだよ』



知ってるよ。

だって、恋の誘導係のカケちゃんだもん。