「おーっ、アズちゃん。おーはよ」
私よりも少し前にいる男の子はそう言って、後ろを振り向いた。
その弾みで私も彼が向かう方向へ視線を向ける。
へぇ、あの子はアズちゃんって言うのか。
そして、意味なく納得しながら前へ向き直った。
逆に、男の子は私を素通りして"アズちゃん"の元へ駆け寄る。
「あれ、なんかアズちゃんいつもよりまつ毛多くね?」
「うっわ。さすがっつーかなんつーか、よく見てんね翔は。そ、これまつエク」
「んー、まぁ可愛い女の子のことは特別ね」
後ろから届く声だけで、男の子がドヤ顔をしているのが分かってしまう。
うん、私もアズちゃんと同意見。
どうしてそんな些細な変化に気付くんだろう。
しかも瞬時に。
それに、うーん……まつエクかぁ……。
もし私が施したら、雛水先輩は気づいてくれるかな…?



