誰のために……声を張っていると思ってるんですか……。
こうやって怒るときばっかり、冷たくするときばっかり、私の方ちゃんと見てくる。
もう……どうしたらいいのさ……カケちゃん。
思い切り下唇を噛み締めて、ふわりと揺れるワンピースの横で拳を握りしめた。
我慢……我慢だ。
デートで泣くなんて、ありえないもん。
「お次のお客様、ご注文をお伺いいたします」
そんなことを考えていると、レジに立つ店員さんが手をあげて私たちを呼んだ。
「あ……はい、えーと、私はテリヤキバーガーで……彼は」
「俺はいらないから」
またもや低い声が届く。
「……ご注文は以上でよろしいですか?」
結局、私だけハンバーガーを買って、近くの空いているイスに座って食べることになった。



