カケちゃん…。
すごく、すごく、嬉しいんだけど…!
「ヒナギクって…ぷっ」
この前もいったのにまた先輩の名前間違えてるよ。
雛水先輩だよ、カケちゃんっ。
思わず小さな笑い声が漏れてしまう。
あぁ、そっか。
楽しまなきゃ損だよね。せっかくのデートなんだもの。
ただ「頑張れ」と背中を押すだけではない、私の気持ちを汲み取る彼の思いやりに、心が温かくなった。
……頑張ろう。
恋だって努力しなきゃダメなんだ。
幸せは自分で引き寄せる。
先輩を振り向かせるためには、まず私から積極的に行動しないと。
「雛水先輩……!」
本に気を取られている彼を、周りに迷惑がかからない程度の声で呼んだ。
って……あれ?反応なし?



