5時間目の終わりを告げるチャイムが鳴って、みんな一斉に席を立つ。

人気者の君の席には早くもたくさんの女子でにぎわっている。

「創也ぁ!勉強おーしえてっ」

「あっ!ミホずるい!あたしもぉ!」

篠崎創也。それが君の名前。

頭が良くて、しかも運動もできて。
それに、かっこいい。

まさに学校の王子様的な存在。
周りには常にたくさんの女子で溢れかえっている。

彼を好きな女子は数えきれないほどいる。
その中のひとり。
蒼伊美緒。それがあたし。
大した特技もなく、THE普通。

冴えない女子高生。

もともと臆病者なあたしは、君に対してはさらに臆病だ。
どう接していいのかわからない。

少しでもいいから近づきたい。大勢いる君のことを好きな女子、のなかの1人じゃなくて、君の特別、になりたい。
そう何度思ったことだろう。

でも、ダメなものはダメ。

人生はそう甘くはない。

普通なあたしが人気者の彼に少しでも近づいたりしたら、あたしはどうなるだろう。

きっと、女子に「調子乗ってる」だの「ブスのくせに」だの言われて、終わりだ。

あたしはいつでも周りからの視線ばかり気にしている卑怯者なのだ。