そんな『あなた』と出逢ったのは、もう大分昔の話。
瞳があった瞬間……

『あなた』が恋という色を憶えてしまう前のこと。



それからの『あなた』は、目まぐるしい速さで僕の色に染まっていった。



絹のように滑らかな肌は夕焼け色にかわり、赤らむ頬も愛らしい。

様々な絵具を塗り重ねて1つの作品を創くりあげる芸術家のように、一種の快感でもあった。



細くじっくりと吸い上げると、滲むように、ほんのりと紅色に刻まれる僕の印。刻が経つほどに、赤紫にはっきりと浮き上がる痣痕。
それは僕だけに赦された、特別な印……

その細やかな四肢に、刻まずにはいられなかった。



切れ切れに漏れる吐息に充たされ、僕の支配欲は崇高なる高みへと昇りつめていく。



『あなた』を染めているのは僕……

僕を染めているのは『あなた』……



一瞬の不安は全身を駆け抜ける快楽によってかき消され、僕の腕に凭れる『あなた』が、平穏なる幸福が悠久に続くことが約束されているように思わせた。



僕と『あなた』との間に訪れる微睡みは、実に心地の良いものであった……