ノブを回そうとしたその時、誰かが音楽室に後ろの戸から入って行った。

三年生の陽菜先輩だ。


どうやら私の存在には気が付かなかったらしい。


「大翔くん?
遅くなってゴメンね。
で、用事って言うのは?」

陽菜先輩の明るい声が空いている窓を通って、廊下に響く。

今日はもう立ち去ろうと思った瞬間、私の足は凍りついてしまった。