「あ、はいっ!!今すぐ行きます。」
勇二さんの声に驚いた隙に、彼の手を軽く振り払う。
「……じゃ、また後で。さ、さっきお願いした片付けお願いしますね。」
「はい…。」
二人の間に何とも言えない微妙な空気が流れる。
意識しているのも覚えているのも私だけだと思ったけど…さっきの彼の発言で確信した。
『覚えていませんか?』
彼も、あの日のことを覚えている。
あのスーパーで会った日のことを…。
「伊緒ちゃん、これ鈴木さんのテーブルに頼むね。」
「はい。」
「こら、仕事中だよ。そんな怖い顔はやめなさい。」
「あ、え…すいません…。」
「はははっ、後でカフェオレを淹れてあげるから。もう少し頑張ってな。」
「っっはい!!!」
勇二さんの優しさと笑顔に心が癒される。
そうだ、今はとりあえず仕事をしよう。
そして、時間がきたら彼と話しをしよう……あ、あと先生にも話さなきゃ…。

