『あ、伊緒?今大丈夫か?』
恐る恐るでた電話からは大好きな先生の声がして、それだけで胸の鼓動が高まっていく。
「大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
『あぁ、それがちょっとトラブルがあって帰りが遅くなりそうなんだ。』
「え、トラブルって…大丈夫なんですか?」
『あぁ、そんなに心配することじゃないよ。で、本題なんだけど、待ってるの大変だろうし無理に泊まりにこなくていいってことを言いたくて。』
電話の向こうから聞こえる、先生の少し焦った声。
多分、心配しなくていいって言ってるけど、本当は凄く大変なんだろうな。
『伊緒?』
「解りました。じゃぁ、お泊りはまた今度落ち着いた時にしましょう。」
『…本当ごめんな。』
あ、先生の声のトーンが少し下がった。
「先生、お泊りはこれから何度でも沢山出来ますよ。だから、私のことは気にしなくて大丈夫です!!先生、無理しすぎないように頑張って下さいね。」
『あぁ、ありがとう。』
それからもう一度私に謝った先生は、『それじゃ』と言って会話を終わらせた。
その言葉を聞いた私も電話を切ろうと耳から少し携帯を離す。
すると、その瞬間かすかに先生の声が聞こえた気がした。
「え?何か言いましたか?」

