立ち去ろうとした私の手を、先生が掴む。




さっきも感じた先生の温もりはやっぱり暖かいもので、触れられただけで安心してしまう。




「…何ですか。私怒ってるんですよ。」




でも、今は安心より怒りが勝っております。




本当は先生が帰ってきたらさっきのお礼を言おうと思ってたけど、そんなもの忘れました、捨てました。





「ごめん、からかいすぎた。」




「謝っても許しません。……今は。」




「ふはっ、その言い方だと、後では許してくれるの?」




「私の拗ねモードが切り替わったら許してあげます。」




わざとらしく、顔に空気を含み片側の頬を膨らませる。




子供っぽいけど、この顔が一番拗ねていると相手に伝えられるであろう。




「…なんだそれ、可愛いとしか思えないんだけど。」




「へ?」




「伊緒のそんな顔初めて見たなぁ。可愛い。」




そう言って笑いながら、先生は私の顔を両手で包み込む。




その行動と言葉の衝撃に、膨らませていた頬が一気にしぼんでいく。




やばいやばいやばい、このまま先生のペースに持っていかれたら拗ねモードがドキドキモードに切り替えられてしまう!!!




いやもう、半分位切り替えられてるんですけどねっ!!!