膝の上に置いていた手に、先生の手が重なる。




「先生?」




「皆の分のアイスコーヒー入れてきてくれるか?あ、あと物置からティッシュ持ってきてくれ。場所解る?」




「はい、解ります。」




「ん、じゃぁ頼む。」




重ねられていた手が私の頭へと移動する。





ポンポンっと2回程頭を撫でて、それから先生は私に微笑みかけた。





「…アイスコーヒーのおかわり持ってきますね。」




その微笑みを合図に、視線をグラスに向ける。




全員分のグラスを回収し、一度それをキッチンに置いてから廊下の途中にある物置きへと向かう。




そして、廊下に出て3人の視界から外れた瞬間、1粒の涙が頬を伝っていった。





「…先生には敵わないなぁ。」




アイスコーヒーのおかわりも、ティッシュのお願いも、全部私の為にしてくれた先生の優しさ。




私が泣きたくないって思ったの、先生には解ったのかな。




じゃなかったら、先生の隣に新品に近いティッシュが置かれていたのに、わざわざティッシュ持ってきて欲しいなんて頼まないよね。




「…ふふふ。」




先生の不器用で暖かい優しさに、自然と笑みがこぼれる。




「いおー、場所わかるかー?」




「あ、はい、大丈夫です!!」




うん、もう大丈夫。




先生のお陰で笑っていられる。




「よし、行きますか。」




1人で小さく意気込みをしてから、3人の元へと向かう。




戻ってから食べたアップルパイは、甘みに混じって少しだけしょっぱく感じた。