でも、正直なところ、志帆さんが先生のニヤケ顔を見たことがないっていうのが意外で仕方ない。




だって、私のご飯を食べる時の先生は表情も変わるし、言葉にだってしてくれる。





そんな先生があんな美味しいアップルパイを食べて何も表現しないなんて…。




しかも、前に新人の頃から喫茶店に通ってたって聞いたから、相当長い付き合いなはずだし…。




うん、考えられないな。





これはもしかしたら志帆さんの思い違いかもしれない。





「おぉ翔也、お前出迎えもなしとは偉くなったなぁ。」





「うっ…いや、別にそんなつもりは……。」





「そうねぇ、そんな人にはアップルパイあげなくてもいいわよねぇ。」





「えっ!!!!!」





「あぁ、そうだな。俺が2つ食べよう。」





「ちょ、待って下さいよ!!」





私が志帆さんと勇二さんの靴を片付けてからリビングに向かうと、そこには2人にいじめられている先生の姿があった。




ふふ、志帆さん、あんまりいじめちゃ駄目って言ってたのに、勇二さんと一緒になっていじめてる。





こんな風に先生をいじめられるのは2人くらいだろうな。





「あ、伊緒!!この2人何とかしてくれ!!」





「えー、無理ですよ。なんてったって、喫茶店のオーナーなんで。逆らったら働き先なくなっちゃいますもん。」





「なっ、お前もグルかっっ!!!!!」





いや、この2人がいれば私も先生をいじめられるな…。