飛び込んだ先生の胸からは、私と同じくらい速い鼓動の音が聞こえる。




体温もいつもより高い気がする。




先生も私と同じように恥ずかしかったり緊張しているのかな。




「先生、もっと泣いてもいいんですよ?」




「あ?泣かねぇよ。男はそんなに簡単に泣いたりしないんですー。」




「何ですかそれ、さっきまでの可愛い先生はどこにいったんですか。」




「可愛いってなんだ、可愛いって。」




「そのままの意味です。涙目になってて、それはもう可愛かったですよ?ふふっ」




「よし、伊緒、覚悟しろ。歯くいしばれ。」




「え、きゃ、あはははははっちょ、こしょぐるの、反則…あははっっ」




さっきまでのぐちゃぐちゃした気持ちが、今では嘘のように消えてしまった。




先生と一緒に居られることがただただ嬉しくて、楽しい。




さっきの私の『お誘い』は先生にどう捉えられたか解らないけど、きっと気持ちは伝わってる。




先生は私のエスパーだもん、そうでしょ?





「せんせ…このままだとスーツ皺になりますよ?」




「あぁーそうだな。…それに、忘れてたけど腹も減ったし…ご飯食べようか。」




「ふふっ、そうですね。今準備するんで着替えてきて下さい。」




「あぁ。」




ひとしきり私をこしょぐって満足したのか、先生は素直に寝室へと着替えに向かう。




よし、私もご飯温めなおそうかな。





「あ、伊緒。」




「はい。」




「ただいま。…さっき、言い忘れてたからな。」




「……はい。お帰りなさい、先生。」