カチ…カチ…と、時計の音が二人の空間に響き渡る。




そして、その音に同調するように自分の鼓動が速くなっていく。




この静かな時間、嫌だな…言ってしまったことを強く後悔してしまう。




緊張する、恥ずかしい、怖い。




もういっそこの空間から逃げてしまいたくなる。




「伊緒。」




「………はい。」




固まっていた空間が、先生の低い声によって崩されていく。




怖くて見られないけど、先生今どんな顔をしているのかな…。




「やべぇ、泣きそう。」




「…………え?」




え、ちょ、今、なんと?




泣きそう?先生が?




「え、先生何言って…。」




「いや、俺も自分で自分が良く解らん。でも、何だろうな凄く嬉しい気持ちなんだ。伊緒に色々してもらって俺は幸せ者だなぁって思ってたら、いつの間にか泣きそうになってた。」




「え…。」




「ははは、感極まって泣くとか俺も相当老けたなぁ。」




そう言って笑う先生の目には、確かに少しだけ涙が浮かんでいた。




嬉しいって、幸せだって、私の行動や言葉でそんな風に先生は思ってくれるんだね。





「せんせっ……。」




「うわっ」




床に座る先生の上に飛びつくように、思いっきり先生の胸へと飛び込んだ。